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富山地方裁判所 昭和46年(わ)38号 判決

本籍

富山県高岡市未広町三六番地の四

住所

同右

会社役員

市堰正之

明治三七年三月二〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官佐々木茂夫出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役四月および罰金二〇〇万円に処する

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、給与、配当及び不動産所得を有していたほか、昭和四二年当時は、キヤバレー「ニユー・ボン」、翌四三年当時は、右「ニユー・ボン」のほかクラブ「コンピユータ」、バー「シルクロード」、割烹「長福」、又、たばこの販売業をそれぞれ経営して事業所得をも有していたところ、市堰吉之と共謀して、右「ニユー・ボン」等の売上、仕入、経費等について所轄の高岡税務署の係員に対して虚偽の申立をして、妻操名義で事業所得税の過少申告をなし、且つ、自己には事業所得はないものと装い、総所得金額の一部を秘すことなどの、不正の方法によつて所得税を免れようと企て、

第一、 昭和四二年分の総所得金額は、一一、六一七、〇三五円(配当、給与所得二、六九一、三〇九円、事業所得八、九二五、七二六円)で、これに対する所得税額は、四、二二八、五〇〇円であつたにかかわらず、昭和四三年三月一五日所轄高岡税務署長に対して総所得金額は二、六九一、三〇九円で、これに対する所得税額は一九、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を、事業所得については、同年三月六日同税務署長に対し、右吉之において、前記操名義で所得税額九一一、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書をそれぞれ提出し、もつて、不正の行為により、右正規の所得税額と申告所得税合算額九三一、四〇〇円との差額三、二九七、一〇〇円をほ脱し、

第二、 昭和四三年分の総所得金額は、一四、〇四一、八七五円(配当、給与、不動産所得二、九七〇、八二五円、事業所得一一、〇七一、〇五〇円)で、これに対する所得税額は、五、五〇八、八〇〇円であつたにかかわらず、昭和四四年三月一〇日所轄高岡税務署長に対し、総所得金額は二、九七七、七五五円で、これに対する所得税額は六九、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を、事業所得については、同日、同税務署長に対し、前記吉之において、前記操名義で所得税額は一、一一〇、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書をそれぞれ提出し、もつて、不正の行為により、右正規の所得税額と申告所得税合算額一、一八〇、〇〇〇円との差額四、三二八、八〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示各事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の大蔵事務官に対する各質問顛末書

一、被告人の検察官に対する各供述調書

一、市堰吉之の大蔵事務官に対する各質問顛末書

一、市堰吉之の検察官に対する供述調書

一、市堰操の大蔵事務官に対する質問顛末書

一、市堰操の検察官に対する供述調書

一、結城邦子、宮嶋信子、江畑八郎、田辺外茂雄、舛井幸夫、北市信雄、宮重俊宏、塩谷孝一、富樫由夫、須田忠一、小杉吉雄、武部敏元、浜健二、藤田清一、市堰珠子の大蔵事務官に対する各質問顛末書

一、査察官作成の各査察事件調査事績報告書

一、大蔵事務官作成の各現金予金有価証券等現在高検査てん末書

一、結城邦子、市堰吉之、被告人 市堰操、指崎重一、細川進、川合三代男、絹野一夫、福島正三、能木俊彦、河合進、能口他家志、堅月武、平田正男、能森功作成の各上申書

一、杉本信雄作成の昭和四五年一月一三日付「収税官吏の徴税資料提供方の件(回答)」と題する書面

一、小島政二、梶いと、須田喜代子、西田英一、西明和子、佐崎一郎、徳前芳次郎、黒川豊次郎、野嶽儀次、土田豊二、沢田治一郎、得能智恵子、油谷常雄、津幡秀、渋谷良三、小松康人、木津清一、大谷重夫、室谷昇、稲垣小太郎、山下健二、広田武夫、長井一郎、佐野博、東北外平、近藤隆夫、米田善次、広瀬直吉、酒井由直、江畑秀雄、麻生与八、加藤久右エ門、磐田正樹、米沢勝治、黒田嘉雄、川合鉄郎、伊藤勝正、林成和、荒川俊次、柴田俊秀、松原草夫、野村すみ、高秀雄、助野英一、安川彌一、関谷重信、島博雄、作成の各上申書

一、島田秀雄作成の昭和四四年一一月一二日付回答書

一、柴野好俊、山本昌史、加藤正義、中村啓三、寺田靖彦、金森澄彌、小林清子、島義直、大野恵吉、井上喜一郎、山口蕃三郎、栗嶋幸一、二口宜子、野上晴義、川野自八、田園子、開発勝弘、福井秀光、亀井利之、田辺憲武、諸江精寛、辻野進、戸佐康信、浅井義徳、島統、真野善次郎、栗嶋勇、蟹谷吉雄、本保勇、柴田俊秀、塩崎兵一、吉村久男、津幡正一、篠島幸子、中島勲、若野龍広、折戸勝太郎、稲垣小太郎、綱孝夫、藤田茂、島勝美、作成の各上申書

一、野村昭子作成の証明書

一、榊原悦夫、出雲博、作成の各上申書

一、安藤左武郎作成の各「市堰商事ならびに関係人の保険契約について」と題する各書面

一、新田繁、市堰清正、二口ゆり子、勝山功、桶谷礼子、作成の各上申書

一、株式会社名芸プロダクシヨン伏見作成の「高岡ニユーポン四一年―四三年度分」と題する書面

一、大蔵事務官作成の告発書

一、大蔵事務官作成の各証明書

一、検察事務官作成の捜査報告書

一、押収してある売上日記帳二冊(昭和四六年押第一九号の一、二)、売上集計メモ五枚(同号の三)、売上集計表二綴(同号の四)、支払一覧表一綴(同号の五)、国税報告書控三枚(同号の六)、給料支給明細一綴(同号の七)、借入出資金関係帳一冊(同号の八)、手形(借入金)一綴(同号の九)、支払一覧表一綴(同号の一〇)、収支計算書一綴(同号の一一)、回収状況一覧表一綴(同号の一二)、人件費メモ八枚(同号の一三)、材料仕入先名簿二枚(同号の一四)、定期預金利息計算書七枚(同号の一五)、代金計算書二枚(同号の一六)、雑書類一冊(同号の一七)、株式会社市堰商事関係書類二綴(同号の一八)、約束手形および利息計算書一綴(同号の一九)、普通預金通帳三〇冊(同号の二〇)、たばこ納品票綴一綴(同号の二一)、市堰ビル新築工事確認通知書一枚(同号の二二の一)、領収証二枚(同号の二二の二)、手帳六冊(同号の二三)、恩給証書一枚(同号の二四)、元帳一冊(同号の二五)、総勘定元帳(同号の二六)、元帳一冊(同号の二七)、市堰商事元帳一冊(同号の二八)、請求書、領収書綴一綴(同号の二九)、定期預金計算書六枚(同号の三〇)、支払表二六枚(同号の三一)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、各所得税法二三八条一項、刑法六〇条にそれぞれ該当するところ、所得税法二三八条項後段により同項前段所定の懲役と罰金とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役四月および罰金二〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 木村幸男)

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